今、あなたのお手元にお茶はありますか?

ある日、「お茶を点てる」の「点」という字を見て、思わず声が出ました。
「え、なんでここ点なの?」と。

図形を描くとき、最初にすることは中心になる点を決めることです。
2つの点がつながった瞬間でした。

よかったら、お茶でも飲みながら読んでください。

世界中で今、抹茶の前に行列ができている

近年、世界の各地で抹茶ブームが広がっています。

コーヒーに代わる飲み物として、日本の和を感じさせるものとして、世界の日常に入り込もうとしています。

また、抹茶の深い緑色は写真映えするので、SNS時代と相性が良かったのです。

これらのことがブームの要因だと思います。

私の目には、世界のあちらこちらに点が増えている、そんな現象にみえるのです。

世界地図の上で、点と点がつながり、線になり、やがて地球を包んでいく。

「点てる」という言葉の、可能性を信じでいたい。

「点てる」という漢字に気づいた日

抹茶を石臼挽き

お茶を「点てる」。
この「たてる」は、「点」と書きます。

あとで知りましたが、この「点」は、もともと図形の点ではなかったのです。
中国から伝わった「点茶(てんちゃ)」という言葉が「茶を点ずる」と読まれ、「点てる」になった。
湯を点じる、つまり少しずつ注ぐ、の「点」。

それでも私は、図形を描くときの点と、重ねてしまいます。

図形を描くとき、まず最初にすることは、点を一つ決めることです。
そしてもう一つの点を決める。
その2つをつなぐと、線になります。
最初の点がないことには始まらない。
もう一つの点が現れないと、つなげない。
点と点が出会い、また別の点が現れ、結ばれてゆく。
それを繰り返してゆくと、立体図形になります。

面白いことに、千利休の時代には「点てる」ではなく「立てる」の字が使われていたそうです。
面が立ち上がる、あの立てる。
漢字は長い歴史の中で、点と立のあいだを静かに行き来していたのです。

お茶を「点てる」という言葉に、「点」という字を当てた感覚。
伝えたかったのは「形」?

茶筅が生み出す、立体の世界

日本の抹茶と茶筅

茶筅を持つと、自然と右回りに動き始めます。

この音は、細胞を細かく揺さぶるような、気持ちの良い音です。

泡が生まれる瞬間、驚きがあって、安心があります。
規則正しく、幾何学模様のように。
ずれていたものが、ぴったり収まるように。

その泡をよく見ると、点に見えます。
小さな泡が細かく、細かく、息をしているようです。

私が立体を描くときも、同じ感覚があります。
点の集合体が線になって、線が面になって、面が立ち上がってくる。

お茶を点てるとき、わたしたちは自然と「今」に戻ってゆきます。

抹茶色という、言葉にならない色

抹茶の泡粒

抹茶色は、好きな色です。

落ち着き、潔さ、憧れ。この3つが同時にある色です。
なぜこんなにも惹かれるのでしょう。

おそらく、これは私たちのDNAが知っている色だからではないでしょうか。
本能が知っている色。

世界的にブームになっている抹茶を、色の視点から見ると、この抹茶色がこれからの時代のキーワードになる気がします。

世界全体をというより、一人一人の内側を束ねてくれる色として。

一碗の中に、宇宙がある

お茶の葉

泡を見て、碗を見て、部屋を見て、庭を見る。

カフェで飲む抹茶も、しっかりとこのDNAを受け継いでいます。だからどこで飲んでも、抹茶はあの静かな空間を作り出せるのだと思います。

千利休は、こう言いました。

——千利休『利休百首』より

茶室という完璧な空間も、紙コップという簡素な器も、突き詰めれば「今この瞬間に一杯の抹茶と向き合う」という点では何も変わりません。

茶室の畳の上でも、ニューヨークの路上でも、東京のオフィスでも。

抹茶を持つ手は、「今」を感じている。
それが、先人たちが茶に込めた願いであり、今も世界中に伝わり続けている、たった一つの本質なのかもしれません。

久しぶりに、抹茶ラテでも飲みますか。